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総合型・推薦型選抜エクストラ10月25日号

私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

総合型選抜情報

◆国公立大の共テ併用型はラスト3か月の基礎学力強化がカギ

文科省の令和7年度大学入学者選抜の概要によると、総合型選抜で大学入学共通テストを課したのは、国立大が47校144学部、公立大が11校17学部となっている。国立大では実施学部の約42%、つまり4割が共テ併用型で実施する。

言うまでもなく、共通テストの用い方は次の3パターンに分かれる。

  • (1)最終合否で共通テストの一定得点以上を合格対象とする
  • (2)書類・面接・小論文等との総合点で合否を決定
  • (3)共通テストで一定得点以上に2次選抜を実施

国立大では(1)(3)の用い方も相当数にのぼるので、共テ併用型では共通テスト得点力が志望校の合格水準に達するかどうかが出願の分岐点になる。一般的に医学系では80~85%以上と基準が高いが、薬学系は70~75%程度(一部に80%)、その他では平均レベルの60~65%前後の設定が多いが、できるだけ高得点を取るのが望ましいことは無論である。特に「書類+共テ型」のケースは、共通テスト得点が合否の決め手になる。

そこで、面接・小論文対策と併行して、ラスト3か月は共通テスト対策にベストを尽くす必要があることを生徒には十分周知徹底し、助言とフォローに万全を期したい。11月を迎える直前時期になると、実力が伸び始める生徒も多い反面、長期の受験学習と思うように学習成果があがらないために心が折れかけている生徒も決して少なくないはずである。

生徒の学力と志望校の合格水準をよく検討して、個別にラスト3か月の取り組みを話し合い、生徒の奮起を促してほしい。総合型選抜を志望する生徒には、必ずそれぞれの夢がある。それを原動力として、基礎学力を効率的・集中的に身につける努力を継続できれば、総合型選抜で共通テスト基準点をクリアすることは決して難しくはない。ひいては、それが一般選抜へのベスト対策ともなる。進路指導部と生徒の皆様の今後のご健闘をお祈り申し上げている。

◆2025総合型選抜で共通テストを課す主な国公立大と基準点一覧

今年度の総合型選抜で共通テストを課す大学・学部の一覧をご紹介する。詳細は弊社の「総合型選抜年鑑」及びWebサイトを参照してほしい(カッコ内は基準点がある場合の数値を示し、一部2024年度参考資料を含む)。


<国立大>

■旭川医科大
医=医(北海道特別選抜=本選抜受験者の中央値以上である者)
■帯広畜産大
畜産
■北海道大<フロンティア入試 TypeⅠ>
理=地球惑星科学(450/600点)、歯(670/900点)、医=医学系(720/900点)、保健学系(600/900点)、工=応用理工系(520/800点)、環境社会工(210/300点)、水産(280/400点)
■北海道教育大<教員養成特別入試>
教育(札幌校、旭川校、釧路校)
■弘前大<総合型選抜Ⅱ>
教育=学校教育‐小学校・養護教諭、医
■岩手大
理工(先端理工学特別プログラム)=化学・生命理工、物理・材料理工、システム創成工、農
■東北大<AOⅢ期>
文、教育、法、経済、理、医、歯、薬、工、農
■宮城教育大<一般枠>
教育=芸術・体育系教育、生活系教育(475/900点)
■秋田大
医=保健(看護学概ね440/800点、理学療法学概ね530/900点、作業療法学概ね450/900点)、理工
■山形大<総合型選抜Ⅲ>
地域教育文化
■福島大
人文社会=経済経営(国・外、地歴・公、数の3つの教科グループのうち2つが60点以上の科目がある者)
■茨城大
理=理(化学、生物科学、地球環境科学、学際理学)
■筑波大<研究型人材入試>
医=医(原則として8割、総合点720点、数160点、理160点以上)
■宇都宮大
地域デザイン科学=コミュニティデザイン、データサイエンス経営、農=森林科学
■埼玉大
経済=経済昼(高得点3教科の合計が一定以上の者)
■千葉大
文=人文(日本・ユーラシア文化、概ね70%に達した者)、教育(方式Ⅰ、高得点の3教科3科目の総合点が65%に達した者)、法政経(総得点が75%に達した者)、国際教養(総得点が70%に達した者)、工=総合工(デザイン・情報工学・物質科学、総得点が70%に達した者)、園芸(総合点が概ね70%に達した者)
■東京科学大
工学院、物質理工学院、情報理工学院(概ね650点以上の得点かどうかで判断する)、生命理工学院、環境・社会理工学院
■東京農工大<ゼミナール入試>
農=環境資源科学(合計得点が該当する教科・科目の平均点の合計の1.2倍以上である者)
■横浜国立大
教育、経済、理工=機械・材料・海洋系、都市科学=都市社会共生、都市基盤、環境リスク共生
■山梨大<総合型選抜Ⅱ>
工、生命環境
■信州大<総合型選抜Ⅱ>
理=理(地球学、450/900点)
■新潟大
理、創生
■富山大<総合型選抜Ⅱ>
教育=理数型(275/500点)、都市デザイン=地球システム科学・材料デザイン工(210/400点)、理(500/900点)、医
■金沢大
<KUGS特別入試(総合型選抜Ⅱ)>融合、人間社会=人文、法、学校教育(石川県教員希望枠=概ね210/300点、美術教育=概ね220/400点、家政教育=概ね270/450点、特別支援教育=概ね300/500点)、地域創造、理工=数物科学・物質化学・機械工学・電子情報通信(540/900点)、地球社会基盤、生命理工(生物科学=概ね480/800点、海洋生物資源=440/800点)、医薬保健=医(680点以上)
 <KUGS特別入試(英語総合選抜Ⅱ)>融合=先導、観光デザイン、スマート創成科学
 <デジタル人材選抜Ⅱ>融合=スマート創成科学、理工=電子情報通信‐情報通信(概ね540/900点)
 <女子特別入試>理工=数物科学(概ね480/800点)、機械工(概ね360/600点)、フロンティア工、電子情報通信、地球社会基盤
■福井大<総合型選抜Ⅱ>
■静岡大
理=地球科学
■名古屋大<共通テストを課す>
理=数理、物理、地球惑星科学
■滋賀大
データサイエンス=Ⅰ型・Ⅱ型(550/900点)
■京都大
総合人間(800点満点で概ね85%以上)、文(900点満点で概ね760点以上)、教育(900点満点で概ね80%以上)、理(900点満点で概ね70%以上)、医=人間健康科学(900点満点で概ね75%以上)、薬(900点満点で概ね8割以上)、農=資源生物科学(900点満点で概ね720点以上)、応用生命科学(630/900点)、地域環境工(800点満点で概ね640点以上)、食料・環境経済、森林科学(900点満点で概ね720点以上)、食品生物科学(700点満点で概ね580点以上)
■大阪大
文(概ね75%以上)、人間科学(概ね75%以上)、外国語(総点が概ね75%・外国語が概ね80%以上)、法・経済(概ね80%以上)、理=<挑戦型>数学・物理(概ね80%以上)、<研究奨励型>化学・生物科学
■神戸大
<総合型選抜>国際人間科学=発達コミュニティ、環境共生(理数系科目受験、320点以上/400点)、理=生物・惑星、医=医
■奈良教育大
教育=教育
■鳥取大
工=社会システム土木系(入学後の指導の参考とするため、可能な限り受験すること)
■岡山大
文、法、教育、理、医(保健)、薬
■広島大<総合型選抜Ⅱ>
文=人文(概ね390/600点)、教育=初等教育・教育学系・心理学系(600/900点)、特別支援教育・自然系・社会系(585/900点)、数理系(概ね700/1000点)、音楽文化系(概ね455/700点)、法(概ね360/600点)、理=物理(概ね870/1200点)、化学(概ね800/1300点)、生物科学(概ね540/900点)、医=医(概ね720/900点)、保健(概ね600/900点<看護学専攻の専門型=概ね560/900点>)、歯=歯(概ね650/900点)、口腔健康科学(口腔保健学‐概ね500/800点、口腔工学‐概ね560/900点)、薬=薬(概ね540/700点)、工(概ね420/600点)、生物生産(540/900点)、情報科学(概ね630/900点)
■徳島大
医=医(概ね75%以上/900点)
■愛媛大<総合型選抜Ⅱ>
法文、教育、社会共創、工(デジタル情報人材育成特別プログラム)、医=医、農
■九州大<総合型選抜Ⅱ>
文、法、経済(75%程度)、理、医=保健(看護学・放射線技術科学・検査技術科学)、歯、工、芸術工、農
■九州工業大<総合型選抜Ⅱ>
工、情報工
■佐賀大<総合型選抜Ⅱ>
理工、農
■長崎大<総合型選抜Ⅱ>
教育、経済、歯
■大分大
教育、医=医、福祉健康科学=福祉健康科学(理学療法、心理学)
■鹿児島大<自己推薦型選抜>
法文、理、医=保健(看護学)、歯、工=建築(建築学プログラム)、農、水産=国際食料資源学特別、共同獣医
■琉球大<総合型選抜Ⅱ>
農(合計点が50%以上であること)

<公立大>

■青森公立大
経営経済=全学科(入学前教育の一環)
■宮城大
看護・事業構想・食産業(入学後の指導の参考)
■山形保健医療大
保健医療=看護
■前橋工科大
工=建築・都市・環境工学群、情報・生命工学群(一般選抜前期と同じ共通テストを受験すること)
■東京都立大
<情報Ⅰ・Ⅱ利用入試>システムデザイン=情報科学
 <グローバル人材育成入試>人文社会=人間社会・人文、システムデザイン=情報科学、経済経営、都市環境=環境応用化学・都市政策科学(経済経営・都市環境は入学後の学業の参考)
■横浜市立大
データサイエンス、国際教養、国際商、理(国際教養・国際商・理は最終合格後の学習課題)
■大阪公立大
工=都市、医=医
■奈良県立大
地域創造(受験した3科目の得点率が5割以上かつ、うち1科目の得点率が7割以上)
■山陽小野田市立山口東京理科大
工、薬=薬
■九州歯科大
歯=歯(590/900点)、口腔保健(420/800点)
■長崎県立大
経営=経営(350/700点)

学校推薦型選抜情報

◆私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

言うまでもなく学校推薦型選抜は、第1志望校に限って受験するのが鉄則だが、生徒によっては合格校を確保するために、第2・第3志望を受験せざる得ないケースも生じる。ここでは、一般推薦を中心に併願・複数受験のポイントを整理しておこう。

(1)志望校の難易度を把握する
一般選抜のように模試等の合格難易度はないが、学校推薦型選抜の難易度も、過去の合格実績、合格者の学習成績の状況、合格最低点などからほぼ難易度の判断はできる。合格者の学習成績の状況等を公表していない大学でも、進路指導部からの問合せにはある程度応じてくれるケースもある。いずれにしろ、第2・3志望の設定は、第1志望より難易度の低い大学を選択したほうが安全であることは言うまでもない。
(2)同系列の試験方法で受験できる大学を選択
第1志望が書類・小論文・面接であれば、これと同系列の入試方法を取る併願校もしくは受験負担の軽い併願校を選択するのがベター。第1志望が書類・面接なのに、第2志望以下は小論文や学科試験といった併願には大きなリスクが伴う。
(3)専願制を破らないで済む併願・複数受験を徹底
志望校が全て併願制(特に西日本)であれば、何校受験しても問題は生じないが、専願制と併願制の複数受験なら、専願制優先に徹して臨む必要がある。併願校の方が知名度は高くても、専願校合格なら、専願校に入学するのが原則だ。
(4)専願リレー受験の場合は日程に注意
専願制間の複数受験も必ずしも不可能ではないが、十分注意する必要がある。第1志望の合格発表後でも出願の間に合う併願校をあらかじめ検討しておき、第1志望の合格発表から第2志望校の出願開始までに余裕がない場合はあらかじめ出願書類を用意しておく必要がある。
(5)納付金を無駄にしないで済む併願を実行
学校推薦型選抜の場合、専願・併願を問わず、一括納入のケースが多い。併願制の場合は、一定期間までに入学を辞退すれば、入学金以外は返還されるが、複数受験では納付金をできるだけ無駄にせずに済む日程上の戦略に特に留意する必要がある。

◆国公立大における併願・複数受験の留意点

国公立大の学校推薦型選抜に関しては、併願・複数受験にきびしい制約が伴い、原則として1校1学部しか受験できないが、複数受験が全く無理かと言えば、必ずしもそうではない。その具体的な手順、留意点を紹介しておこう。

(1)第1志望は共テ免除型、第2志望は共テ併用型で受験
国公立大の学校推薦型選抜は共テ免除型が11月出願、共テ併用型が12月~1月の出願となっているケースが多いので、第1志望を共テ免除型、その合格発表後の第2志望を共テ併用型にすれば複数受験が可能になるが、大学によってダブル受験はできない場合も多いので各要項の留意事項の記載に注意してほしい。ただし、第2志望の当該校学部に推薦決定者がいない場合に限られることは言うまでもない。
(2)共テ免除型間の併願も可能
国公立大の学校推薦型選抜は全て専願制である。入試日程が短期間に集中しているが、弊社の年鑑で検討すれば、第1志望の合否発表後でも出願の間に合う第2志望校を探すことは可能である。ただし、高校推薦枠にアキがある場合に限られる。
(3)共テ併用型間の併願は不可能
共通テストを課す大学の複数受験は、学校推薦型選抜用の共テ成績請求票が1枚しかないので、自動的に不可能ということになる。
(4)国公立大と私立大の併願
国公立大と私立大の学校推薦型選抜を併願する場合、第1志望が国公立大なら、第2志望の私立大は日程からみて、併願制校を選択せざるをえない。ただ、国公立大合格なら、私立大に納付した入学金は戻ってこないと覚悟しておく必要がある。私立大が第1志望なら、国公立大への出願はしてはならない。

その他、大学によっては学校推薦型選抜募集要項に「本学以外の学校推薦型選抜への出願は認めない」などの注意書きがある場合もあるので十分注意してほしい。

ニュースフラッシュ

◆定員割れの私立大、前年比34校増の354校で過去最多を更新

日本私立学校振興・共済事業団は9月13日、2024年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」を公表した。集計した私立大598校のうち、定員割れの大学は前年比34校増の354校、大学全体に占める未充足校の割合は59.2%となり、過去最高を更新した。調査開始以降初めて5割を超えた昨年よりもさらに上昇している状況となっている。

<私立大の入学定員数等の増減状況>
令和6年度 令和5年度 増減
集計学校数 598校 600校 -2校
入学定員 503,874人 502,635人 +1,239人
志願者数 3,704,471人 3,712,801人 -8,330人
受験者数 3,534,534人 3,543,808人 -9,274人
合格者数 1,490,680人 1,494,024人 -3,344人
入学者数 494,730人 500,599人 -5,869人
志願倍率 7.35倍 7.39倍 -0.04
合格率 42.17% 42.16% +0.01
歩留り率 33.19% 33.51% -0.32
入学定員充足率 98.19% 99.59% -1.40
入学定員充足率
100%未満の学校数
354校
(59.2%)
320校
(53.3%)
+34校
(+5.9%)

「私立大学・短期大学等入学志願動向」は、日本私立学校振興・共済事業団が2024年度に実施した「学校法人基礎調査」から、入学定員数、志願者数、入学者数などを集計し、志願倍率や入学定員充足率などの動向を規模別、地域別、学部系統別にまとめたものである。集計学校数は、大学598校、短大272校、大学院487校となっている。

このうち大学は、入学定員は増加しているが、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数がすべて前年度から減少している。志願者数は前年度比8,330人減の3,704,471人、入学者数は5,869人減の494,730人。また、入学定員充足率は前年度から1.40下降して、98.19%となった。

定員割れの大学は前年度比34校増の354校と過去最多。大学全体に占める未充足校の割合は前年度比5.9%増の59.2%となっている。規模別でみると、入学定員充足率が上昇した区分は、「100人未満」が74.93%、「1,000~1,500人未満」が100.32%、「3,000人以上」が103.71%の3区分のみ。「100~200人未満」が83.37%など、特に小規模校を中心に定員割れが拡大している。

また、学部系統別でみてみると、すべての学部系統で入学定員充足率が下降しているが、医学、農学、社会科学、芸術系では入学定員充足率が100%を超えている状況となっている。

いずれにしても、大学が定員を充足しているかどうかは、大学運営に直結する問題である。授業料の高騰など、大学教育を取り巻く環境はより一層厳しさを増している。特に、地方の小規模大学では入学定員充足率を満たしていない大学がかなり多くなっている。この地方と大都市圏の大学とのバランスをどう保っていくかも大きな課題の1つかもしれない。

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