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AO・推薦入試エクストラ9月10日号

私立大:2017AO入試全国統計レポート(1)

AO入試情報

私立大:2017AO入試全国統計レポート(1)

弊社が毎年実施しているAO入試に関する諸統計の結果について、数回に分けてレポートする。第1回は、私立大の学部別実施状況を中心にご紹介する。

まず、AO入試実施校は472校で、前年度に続き4校増え、実施率は81.7%となった。地区別の実施校数は次のとおりで、やはり関東・中部・近畿地区での実施が目立つ。

北海道・東北 関東 中部 近畿 中国・四国 九州
42校 175校 77校 101校 36校 41校

学部系統別の実施状況(複合学部は複数扱い)をみると、計1,386学部で前年より53学部増加している。昨今、学校数はやや頭打ちの傾向にあるが、学部数は依然として増加傾向にある。内訳は次のとおり。

学部系統 2017年度学部数(比率%) 2016年度比増減
人文科学 251(18.1%) +19(+0.7%)
社会科学 470(33.9%) -5(-1.7%)
教育(教員養成) 165(11.9%) +14(+0.6%)
理工 121(8.7%) +2(-0.2%)
農・水産・獣医 12(0.9%) 0( 0%)
保健・医療 144(10.4%) +13(+0.6%)
生活(栄養) 79(5.7%) -2(-0.4%)
芸術 78(5.6%) +8(+0.3%)
スポーツ(健康) 66(4.8%) +4(+0.1%)

本年度の実施学部数では、人文科学系の増加数が最も大きく、次いで教育(教員養成)系の増加が前年に続いて目立ったが、保健・医療系の増加ぶりも注目される。近年、教育・医療など資格型学部の新増設が際立っており、これらの系統では今後もAO実施校が増えると予測される。社会科学系の減少は、前年に続いて学部の統合・再編がかなりあったことも影響している。

全体の実施学部数は、推薦入試の計1,769学部と比べてまだ少なく、特に保健・医療系は実施数がまだ推薦入試の半分程度にとどまっている。

◆私立大:2017AO入試の地区別学部実施状況

ここでは、私立大の2017年度AO入試に関する地区別の実施学部状況をご紹介する。私立大では地区ごとの実施状況にかなり差異があるので、進路指導に際しては十分留意してほしい。なお、弊社統計では複合領域の学部は複数で集計している。

系統 北海道
東北
関東 中部 近畿 中国
四国
九州
人文科学 17 96 34 64 20 20
社会科学 39 177 75 112 32 35
教育(教員養成) 10 61 25 40 20 9
理工 8 56 14 23 12 8
農・水産・獣医 0 8 1 1 1 1
保健・医療 11 60 20 26 18 9
生活(栄養) 4 27 13 18 10 7
芸術 7 29 8 20 8 6
スポーツ(健康) 4 20 16 16 5 5
(計) 100 534 206 320 126 100

全般的には関東地区の学部数が群を抜いている。どの地区も社会科学系が最も多いが、特に北海道・東北地区では約4割を占める。最も学部数の少ない農・水産・獣医系は、全12学部のうち8学部が関東地区に集中している。人気の高い教育系、保健・医療系は各地区とも相当数が実施している。

推薦入試情報

◆私立大:2016公募推薦入試の学部別志願動向(弊社集計)

弊社では全国版「推薦入学年鑑」の発刊と共に、私立大の公募推薦入試の動向を把握するため、多角的な統計作業を実施している。今回は、まず2016入試結果のまとめからレポートしておきたい(データ公表校を集計、一部は指定校制データを含む)。学部系統別の志願・合格状況は、次のとおりであった。

系統 志願者数 合格者数 倍率(前年度)
人文科学 51,368人 22,750人 2.3倍(2.2倍)
社会科学 98,874人 41,666人 2.4倍(2.3倍)
教育(教員養成) 17,812人 8,339人 2.1倍(2.2倍)
理工 30,676人 12,362人 2.5倍(2.3倍)
農・水産・獣医 7,388人 2,781人 2.7倍(2.6倍)
保健・医療 43,238人 15,363人 2.8倍(2.9倍)
生活(栄養) 13,967人 5,644人 2.5倍(2.4倍)
芸術 5,485人 3,490人 1.6倍(1.5倍)
スポーツ・体育(健康) 9,438人 5,186人 1.8倍(1.8倍)
(計) 278,246人 117,581人 2.4倍(2.3倍)

2012年度集計では約5千人(2.4%)の志願減であったが、2013年度は約1万2千人(5.5%)の大幅増加に転じ、2014年度も約8千人(3.3%増)、そして2015年度は実に約2万3千人(9.4%)増と大幅に増加し、2016年度も約8千5百人(3.2%)の志願増となったことが特筆される。つまり、推薦戦線はここ4年連続で増加しているわけである。特に人文科学系、社会科学系の文系の増加が際立ち、教育系、保健・医療系ではやや慎重な出願傾向がうかがえる。過去5年、全体の平均倍率も2.0倍→2.1倍→2.2倍→2.3倍→2.4倍と若干きびしくなっているので、十分注意する必要がある。学部系統別の平均倍率では、保健・医療系が3倍台に迫りつつある点に注意する必要がある。次いで、農・水産・獣医系の2.7倍、管理栄養を含む生活系の2.5倍が高い。

◆私立大:2016公募推薦入試の地区別志願動向(弊社集計)

弊社で独自に集計した2016公募推薦入試の地区別志願状況についてご紹介する(データ公表校を集計、一部は指定校制を含む)。

地区 2016年度 2015年度 増減数 増減率(前年)
北海道・東北 6,875人 6,703人 +172人 +2.6%(+6.4%)
関東 43,580人 43,615人 -35人 -0.1%(-0.5%)
中部 23,222人 23,531人 -309人 -1.3%(-0.2%)
近畿 186,128人 176,521人 +9,607人 +5.4%(+15.1%)
中国・四国 10,137人 11,266人 -1,129人 -10.0%(+5.7%)
九州 8,304人 8,022人 +282人 +3.5%(-7.7%)
(計) 278,246人 269,658人 +8,588人 +3.2%(+9.4%)

2012年度は中国・四国地区のみが志願増、その他の地区は全て志願減であったが、2013年度は全く逆の志願動向となり、2014年度は近畿、中国・四国を除く4地区で再び志願減となり、2015年度はかつてない9.4%もの大幅増となった。推薦戦線でも地区により隔年現象が生じることがあるので十分留意する必要がある。

特に注目されるのは、例年、全国志願者の5~6割が集中する近畿地区がここ2年約2万3千人、約1万人の大幅増となった点だろう。2016年度の志願増も、この近畿地区の大幅増が主要因といってよい。次いで北海道・東北、九州の2地区でやや志願者が増えた。成績基準の厳しい関東地区が平均1.5倍なのに対して、基準撤廃・併願型の近畿地区は3.3倍もの激戦区となっている。

ニュースフラッシュ

◆平成28年度「私立大学・短期大学等入学志願動向」

日本私立学校振興・共済事業団は、28年度に実施した「学校法人調査」から、入学定員、志願者数、入学者数等を集計し、入学定員充足率や志願倍率等の動向を規模別、地域別、学部系統別にまとめて公表した。

このうち、私立大学に関する調査結果をレポートする。集計学校数は577校。まず入学定員は467,525人で前年度より約4千人増加。志願者数は消費税の増税が先送りになったこともあって私学回帰に後押しされ、約11万6千人もの増加で3,629,277人となった。そのため、志願倍率は前年の7.58倍から7.76倍へ上昇。実際の受験者数は3,489,798人。合格者数は1,245,863人で、競争率は2.8倍。入学者数は1,145人増の488,209人で、歩留率は39.19%で、前年より若干低下した。全体の定員充足率は104.42%で、これも0.62ポイント下降している。

定員充足率が100%未満の大学は7校増加して計275校となり、未充足校の割合は1.3ポイント上昇して、全体の44.5%を占める。

志願倍率の分布をみると、9倍以上が85校ある反面、1倍台が171校、1倍未満が38校。人気の面で格差の大きい現状が歴然としている。合格率の分布では、合格率が20%未満の難関校が22校、20%台が48校、30%台が63校だが、90%台が前年より16校増えて125校、100%が14校あり、難度面での格差も広がっている。

規模別の志願倍率では、1,500人以上3,000未満の大学が、9.07倍→9.47倍、3,000人以上が11.71倍→12.08倍と上昇しているのに対して、それより小規模の大学ではいずれも下降。大都市圏の総合大へ人気が集まっていることを裏付けている。

地域別の志願倍率をみると、東京9.85倍、京都10.34倍、大阪9.97倍の3地域が群を抜いて高い。

学部系統の志願倍率で、最も高いのは医学系の29.29倍。次いで理・工学系の11.24倍、農学系の11.12倍で、10倍を超えるのはこの3分野だけで、薬学系は9倍台へ下降している。受験者の多い人文・社会科学系は7割台だが、前年度よりいずれも若干上昇している。

ちなみに、平成元年度の定員充足率は124.75%なのに対して、28年度は104.42%にまで低下している。私学全体の経営環境の悪化は著しく、大都市圏の総合大の多くが定員規制の前に駆け込み臨時定員増を行ったことで、来年度以降、地方圏の小規模校群がさらに苦境に追い込まれると懸念される。そして、2019年4月から専門職大学(仮称)がスタートすることによって、高等教育機関の淘汰がいっそう進むことになると予測される。

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

AO入試(6):AO入試で生きる生徒の個性・資質のチェック

大学入試のメインは一般入試、次いで推薦入試である。その2つと比較すれば、AO入試の受験市場は小さいが、大学入試の多様化を促進し、多彩な人材を発掘する上で、AO入試は独自の役割を担っている。2017年度からは前年の京都大に続いて大阪大が「世界適塾AO入試」を実施するほか、滋賀大、熊本大、宮城大などが新規導入し、AO入試への関心は高まると予測される。各高校の進路指導部をAO相談に訪れる生徒も少なくないはずである。高校側では、国公立大、私立大それぞれのAO入試の現状・特質を十分把握したうえで、入試のマッチングを検討する必要がある。

ここでは、どのような生徒がAO入試に向き、どのような個性・資質がAO入試で生きるか、(1)共通事項、(2)国公立大、(3)私立大の3つの観点から考察しておこう。

(1)共通事項

まず志願理由書、自己推薦書、活動報告書等の提出書類を通して、自分の進学目的や適性・能力・意欲等を明確に大学側へアピールできる内容性(学習・課外活動・取得資格など)と表現力を備えていることがポイントになる。とりわけ志望校の教育・研究における特性や卒業後の進路状況に関する十分な理解と、生徒自身との適合性を認識して、「明確な進学目的」を持っているかどうかを重視すべきだろう。

次に大多数の大学では、面接によって学力水準や適性・能力を判定する。面接の場で、明快に応答できる能力が不可欠になるので、応答・対話を苦手とする受験生の場合は、積極的に発言・対話・討論ができるよう指導する必要がある。

第三に、大学側が設定している「求める学生像」と生徒のマッチングを十分に検証することが大切になる。明らかに学究型や高度専門職業人の候補を求めるタイプのAO入試に、それらへの志向が希薄な生徒を送り込んでも徒労に終わる。近年は各大学とも綿密にアドミッションポリシーを明示しているので十分注意したい。

(2)国公立大

成績基準の有無にかかわらず、できる限り高学力層が適している。特に専攻教科に関連する成績水準は高い方がよい(最低でも4.3以上)。募集枠が小さい学部・学科が多いので、調査書の学習記録は合否判定できわめて重要になる。

セ試併用型では、過去の当該校の入試データ(セ試)を調べて、合格者の平均点か、悪くても受験者の平均点以上の得点を見込める学力が必要になる。言うまでもなく、医・歯・薬学系では80~85%以上の得点力が見込めないと合格は難しい。セ試の予測得点ラインが出願の可否を左右する。

また、面接や小論文に対応できる力も不可欠で、いわゆる受験勉強にはさして身を入れていなくても、個性的・自主的な学習・研究活動には熱中するタイプなら、AO入試は最適の受験ルートといえる。国公立大では志望する学問領域への高い適性および資質が不可欠といえる。

(3)私立大

私立大で最も基本的なことは、専願区分のいかんに関わらず、第1志望としての入学熱意になる。生徒が志望校を十分研究した上で、入学を希望しているかどうかが前提条件で、単に早期合格を確保したいという動機なら、再考を促す必要がある。

私立大のAO入学者比率が10%を超えている今日、私立大におけるAO入試の実施目的は高度人材発掘型、高学力型、課外活動型、有資格型、入学熱意型など様々に多様化しているが、各タイプに向く生徒の個性、能力、資質等の判断はさほど困難ではないだろう。各大学のアドミッション・ポリシーに沿って、各選考パターンへの適性をチェックすればよい。特に中堅私立大群にあっては、一般入試に対応できる学力、あるいは推薦入試にふさわしい成績水準を備えていなくても、生徒の目的志向やチャレンジ姿勢次第でAO入試の門戸は広く開かれている。

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