総合型・推薦型選抜エクストラ9月25日号
私立大:2023総合型選抜全国統計レポート(2)
総合型選抜情報
◆私立大:2023総合型選抜全国統計レポート(2)
私立大2023総合型選抜における専願区分、成績基準、資格・活動実績に関する弊社の統計レポートをお届けする(比率は少数第2位を四捨五入)。
<専願区分> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
専願制 | 459校 | 70.4% |
併願制 | 158校 | 24.2% |
専・併 | 21校 | 3.2% |
非公表 | 14校 | 2.2% |
総合型選抜でも全体の約7割は専願制で実施し、併願制は24.2%だが、AO時代と比べると併願性がかなり増加している。その要因としては、併願制で実施していた自己推薦入試の移行、近畿地区の公募制推薦(併願)が総合型選抜に移行したことがあげられる。出願期が早いので、3年次の早期に第1志望校を絞り込んだ生徒でないと、総合型選抜は活用しにくい。
<成績基準> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
設定なし | 483校 | 74.2% |
複数条件の1つ | 20校 | 3.1% |
必須条件 | 148校 | 22.7% |
学校推薦型選抜との大きな相違点の1つが、成績基準の設定がきわめて少ないことだろう。必須条件としているのは全体の22.7%(前年22.8%)で、約8割は成績基準を設けておらず、多くの志願者が流れ込む最大要因となっている。
<資格・活動実績> | (大学数) | (比率) |
---|---|---|
設定なし | 479校 | 65.3% |
複数条件の1つ | 74校 | 10.1% |
必須条件 | 180校 | 24.6% |
成績基準と異なり、取得資格や活動実績を設定する割合は、複数条件の1つと必須条件を合わせて34.7%と全体の4割近くを占め、増加傾向にある。逆の見方をすれば、資格や活動実績を持つ生徒には、総合型選抜は現役合格へのパイプとなりうる入試であると言えよう。ただし、上位私立大群では総合型枠がさほど大きくなく、出願要件と合格可能性を慎重に検討する必要がある。
◆私立大:地区別2023出願条件の設定状況
ここでは2023総合型選抜の出願条件に関する地区別の弊社統計をご紹介する。各地区の特徴を十分把握しておいてほしい。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
専願制 |
49校 | 155校 | 76校 | 98校 | 38校 | 43校 |
併願制 |
9校 | 71校 | 26校 | 37校 | 6校 | 9校 |
専・併 |
0校 | 5校 | 4校 | 11校 | 1校 | 0校 |
定めず |
1校 | 8校 | 1校 | 3校 | 0校 | 1校 |
学校推薦型選抜では併願制が主流の中部・近畿・中四国地区においても、総合型選抜は専願制主流なので要注意。一方、関東地区の学校推薦型選抜は専願制が主流だが、総合型選抜では併願制も全体の29.7%とかなり多い。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
設定なし |
46校 | 180校 | 78校 | 102校 | 37校 | 40校 |
複数条件の1つ |
0校 | 8校 | 2校 | 6校 | 1校 | 3校 |
必須条件 |
10校 | 55校 | 25校 | 37校 | 9校 | 12校 |
成績基準を必須条件として設けるケースは、かつては近畿地区が最も多かったが、近年は関東地区で39校→50校→55校→55校と増加傾向にある。ただ、一部の有名私大を除き、全般的に総合型選抜の基準は緩やかである。
地区 区分 |
北海道 東北 |
関東 | 中部 | 近畿 | 中国 四国 |
九州 |
---|---|---|---|---|---|---|
設定なし |
45校 | 174校 | 79校 | 104校 | 40校 | 37校 |
複数条件の1つ |
6校 | 30校 | 7校 | 16校 | 1校 | 14校 |
必須条件 |
8校 | 81校 | 22校 | 43校 | 9校 | 16校 |
必須条件としての設定率が最も高いのは関東地区で28.4%、次いで近畿地区の26.4%、九州地区の23.9%が高い。
学校推薦型選抜情報
◆国公立大:2022学校推薦型選抜の学部系統別志願動向(統計レポート2)
前号では私立大の志願動向を紹介したが、今号では国公立大の学部系統別志願動向の調査統計もまとめているのでレポートしておきたい。
学部統計 | 志願者数 | 合格者数 | 競争率(前年度) |
---|---|---|---|
人文科学 |
1,531人 | 563人 | 2.7倍(2.8倍) |
社会科学 |
4,916人 | 2,123人 | 2.3倍(2.3倍) |
教育・教員養成 |
6,009人 | 2,200人 | 2.7倍(2.7倍) |
理学 |
912人 | 440人 | 2.1倍(2.1倍) |
工学 |
5,681人 | 2,689人 | 2.1倍(2.1倍) |
農・水産・獣医 |
1,978人 | 903人 | 2.2倍(2.2倍) |
保健・医療 |
5,884人 | 1,960人 | 3.0倍(3.0倍) |
生活科学(栄養) |
149人 | 50人 | 3.0倍(3.8倍) |
芸術・スポーツ |
618人 | 289人 | 2.1倍(2.0倍) |
(計) |
27,678人 | 11,217人 | 2.5倍(2.5倍) |
国立大は全て公募制で入試結果の非公表校もないので、弊社集計と11月公表される文科省統計の誤差も小さいとみられる。まず全体的に志願者数の上位をみると、教育・教員養成系、保健・医療系、工学系の3分野が約6千人でベスト3を占める。次いで社会科学系の4,916人、農・水産系の1,978人が続いている。理系(理・工・農・保健)の志願者数は約1万5千人で、全体の52.2%を占める。教育・教員養成系が第1位になっていることは、この分野の志望者は女子が多いこともあり、推薦志向が強いとみられている。
一方、合格者でみると、工学系、教育・教員養成、社会科学系、保健・医療系の順に多い。最も合格者数が少ないのは生活科学系でわずか50人にとどまっている。
その結果、競争率では生活科学系、保健・医療系の3.0倍が最も高く、次いで人文科学系、教育・教員養成系の2.7倍、社会科学系の2.3倍の順となっている。理・工学系は倍率が低く、学校推薦型選抜活用の余地がまだ大きいと言ってよい。
◆公立大:2022学部系統別志願動向
ここでは公立大の2022学校推薦型選抜の志願動向をレポートする。衆知のとおり、公立大は一部で指定校制を実施しており、全体の数値は弊社統計と文科省統計では若干差異が生じることをおことわりしておく。公立大の2022学校推薦型選抜結果の集計状況は以下のとおり。
学部統計 | 志願者数 | 合格者数 | 競争率(前年度) |
---|---|---|---|
人文科学 |
2,286人 | 924人 | 2.5倍(2.7倍) |
社会科学 |
6,114人 | 3,052人 | 2.0倍(2.0倍) |
教育・教員養成 |
620人 | 277人 | 2.2倍(2.3倍) |
理・工学 |
2,235人 | 1,084人 | 2.1倍(2.2倍) |
農・水産・獣医 |
635人 | 298人 | 2.1倍(1.9倍) |
保健・医療 |
6,221人 | 2,216人 | 2.8倍(2.8倍) |
生活科学(栄養) |
769人 | 222人 | 3.5倍(3.3倍) |
芸術・スポーツ |
878人 | 276人 | 3.2倍(2.8倍) |
(計) |
19,758人 | 8,349人 | 2.4倍(2.4倍) |
公立大における推薦実施学部数は、保健・医療系と社会科学系の2分野が群を抜いて多いのが特徴だが、志願者数も保健・医療系が6,221人、社会科学系6,114人とこの2分野が群を抜いて多い。また、人文・社会科学系を合わせた文系2分野の志願者数は国立大を上回っている。
合格者数をみると、社会科学系、保健・医療系の2分野が突出しており、最も少ないのは国立大と同じく生活科学系の222人となっている。
競争率をみると、生活科学系の3.5倍(前年3.3倍)が最も高く、次いで芸術・スポーツ系の3.2倍、保健・医療系の2.8倍、人文科学系の2.5倍の順となっている。
公立大では地元型が多いこともあって、平均倍率は2.4倍と国立大より若干低いが、全国枠では倍率が高くなる傾向になるので留意したい。
ニュースフラッシュ
◆東京工業大と東京医科歯科大が統合へ協議の方向
国立の東京工業大と東京医科歯科大が、統合へ向けて協議を始めようとしている。この2大学の研究水準は理工系と医療系でそれぞれ国内トップレベルだが、一部の大学に巨額の支援を行う「大学ファンド」の公募が年内に予定されるなか、この資金の獲得も含め、統合で研究力をさらに強化するためとみられる。
この2大学は世界最高水準の教育研究活動が期待される指定国立大である。統合が実現すれば、指定国立大同市では初めてのケースとなる。
政府は大学の国際競争力強化のため、財政投融資を主な原資として、10兆円規模の大学ファンドを創設して、2024年度から運用益をもとに最大で5~7大学に年数百億円ずつ支援する方針。今年12月までに対象となる「国際卓越研究大学」を公募する。
この応募には「国際的に優れた研究成果の創出」などの要件を満たす必要があり、現在のところ東京大や京都大などが有力視されているが、当然ながら東北大、名古屋大、大阪大なども名乗りをあげるだろう。
東京工業大は理・工など6学院があり、学部生と院生の計約1万人が学んでいる。東京医科歯科大は医・歯の2学部があり、学部生と院生の計約3千人が学ぶ。
国が2021年度に国立大に配分した運営交付金の額をみると、東京工業大は10位の218億円、東京医科歯科大は19位の138億円だった。統合した場合、トップ10に入る北海道大(366億円)や筑波大(361億円)にほぼ並ぶ規模となる。
統合の形は、今後協議することになる。両校を統合して1つの大学にするか、名古屋大と岐阜大を運営する「東海国立大学機構」のように1法人が2大学を運営するかなどは未定で、今後、外部の識者も含めて、統合のメリットやデメリットを検討することになる。ただ、優れた研究実績を持つ2校の統合には、未来性をはらむ新しい形を摸索してほしいという期待も小さくない。