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総合型・推薦型選抜エクストラ10月25日号

私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

総合型選抜情報

◆国公立大の共テ併用型はラスト3か月の基礎学力強化がカギ

文科省の令和6年度大学入学者選抜の概要によると、総合型選抜で大学入学共通テストを課したのは、国立大が44校141学部、公立大が9校14学部となっている。国立大では実施学部の54%、つまり5割強が共テ併用型で実施する。

言うまでもなく、共通テストの用い方は次の3パターンに分かれる。

  • (1)最終合否で共通テストの一定得点以上を合格対象とする
  • (2)書類・面接・小論文等との総合点で合否を決定
  • (3)共通テストで一定得点以上に2次選抜を実施

国立大では(1)(3)の用い方も相当数にのぼるので、共テ併用型では共通テスト得点力が志望校の合格水準に達するかどうかが出願の分岐点になる。一般的に医学系では80~85%以上と基準が高いが、薬学系は70~75%程度(一部に80%)、その他では平均レベルの60~65%前後の設定が多いが、できるだけ高得点を取るのが望ましいことは無論である。

特に「書類+共テ型」のケースは、共通テスト得点が合否の決め手になる。

そこで、面接・小論文対策と併行して、ラスト3か月は共通テスト対策にベストを尽くす必要があることを生徒には十分周知徹底し、助言とフォローに万全を期したい。11月を迎える直前時期になると、実力が伸び始める生徒も多い反面、長期の受験学習と思うように学習成果があがらないために心が折れかけている生徒も決して少なくないはずである。

生徒の学力と志望校の合格水準をよく検討して、個別にラスト3か月の取り組みを話し合い、生徒の奮起を促してほしい。総合型選抜を志望する生徒には、必ずそれぞれの夢がある。それを原動力として、基礎学力を効率的・集中的に身につける努力を継続できれば、総合型選抜で共通テスト基準点をクリアすることは決して難しくはない。ひいては、それが一般選抜へのベスト対策ともなる。進路指導部と生徒の皆様の今後のご健闘をお祈り申し上げている。

◆2024総合型選抜で共通テストを課す主な国公立大と基準点一覧

今年度の総合型選抜で共通テストを課す大学・学部の一覧をご紹介する。詳細は弊社の「総合型選抜年鑑」及びWebサイトを参照してほしい(カッコ内は基準点がある場合の数値を示し、一部2023年度参考資料を含む)。


<国立大>

■旭川医科大
医=医(北海道特別選抜=本選抜受験者の中央値以上である者、国際医療人特別選抜=本選抜受験者の合計点順で下位20%を除外した平均点以上の者)
■北海道大<フロンティア入試 TypeI>
理=地球惑星科学(450/600点)、歯(670/900点)、医=医学系(765/900点)、保健学系理学療法学(680/900点)、看護学・検査技術科学・作業療法学・放射線診療科学、工=応用理工系(520/800点)、環境社会工(225/300点)、水産(280/400点)
■北海道教育大<教員養成特別入試>
教育(札幌校、旭川校、釧路校)
■弘前大<総合型選抜II>
教育=学校教育(小学校、特別支援教育)・養護教諭、医、農学生命科学
■岩手大
理工(先端理工学特別プログラム)=化学・生命理工、物理・材料理工、システム創成工、農
■東北大<AOIII期>
文、教育、法、経済、理、医、歯、薬、工、農
■宮城教育大<一般枠>
教育=芸術・体育系教育、生活系教育(450/900点)
■秋田大
医=保健(看護学概ね440/800点、理学療法学概ね530/900点、作業療法学概ね450/900点)、理工
■山形大<総合型選抜III>
地域教育文化、理、工(昼、600点中概ね300点を満たした者)
■福島大
人文社会=経済経営(国・外、地歴・公、数の3つの教科グループのうち2つが60点以上の科目がある者)
■茨城大
理=理(化学、生物科学、地球環境科学、学際理学)
■筑波大<研究型人材入試>
医=医(原則として8割、総合点720点、数160点、理160点以上)
■宇都宮大
地域デザイン科学=コミュニティデザイン、データサイエンス経営
■埼玉大
経済=経済昼(高得点3教科の合計が一定以上の者)
■千葉大
文=人文(日本・ユーラシア文化、概ね70%に達した者)、教育(方式I、高得点の3教科3科目の総合点が65%に達した者)、法政経(数学が75%に達した者)、国際教養(総得点が70%に達した者)、工=総合工(デザイン・情報工学・物質科学、総得点が70%に達した者)、園芸(総合点が概ね70%に達した者)
■東京工業大
工学院、物質理工学院、情報理工学院(概ね650点以上の得点かどうかで判断する)、生命理工学院、環境・社会理工学院
■東京農工大<ゼミナール入試>
農=環境資源科学(合計得点が該当する教科・科目の平均点の合計の1.2倍以上である者)
■横浜国立大
教育、経済、理工=機械・材料・海洋系、都市科学=都市社会共生、都市基盤、環境リスク共生
■山梨大<総合型選抜II>
工、生命環境
■信州大<総合型選抜II>
理=理(地球学、450/900点)
■新潟大
理、創生
■富山大<総合型選抜II>
教育=理数型(325/500点)、経済(300/600点)、都市デザイン=地球システム科学・材料デザイン工(210/400点)、理=物理(260/500点)、生物(450/800点)、自然環境科学(210/400点)、医
■金沢大
<総合型選抜II>融合、人間社会=人文、法、学校教育(石川県教員希望枠=概ね210/300点、美術教育=概ね240/400点、家政教育=概ね270/450点、特別支援教育=概ね300/500点)、地域創造、理工=数物科学・物質化学(540/900点)、機械工・電子情報通信(概ね585/900点)、地球社会基盤、生命理工(生物科学=概ね480/800点、海洋生物資源=440/800点)、医薬保健=医(680点以上)
 <英語総合選抜II>融合=先導、観光デザイン、スマート創成科学
■福井大<総合型選抜II>
■静岡大
理=地球科学
■三重大
工=情報工学
■滋賀大
経済(昼)=課題図書型(630/900点)、データサイエンス(550/900点)
■京都大
総合人間(800点満点で概ね85%以上)、文(900点満点で概ね760点以上)、教育(900点満点で概ね80%以上)、理(900点満点で概ね70%以上)、医=人間健康科学(900点満点で概ね75%以上)、薬(900点満点で概ね8割以上)、農=資源生物科学(900点満点で概ね720点以上)、応用生命科学(630/900点)、地域環境工(800点満点で概ね640点以上)、食料・環境経済、森林科学(900点満点で概ね720点以上)、食品生物科学(700点満点で概ね600点以上)
■大阪大
文(概ね75%以上)、人間科学(概ね75%以上)、外国語(総点が概ね75%・外国語が概ね80%以上)、法・経済(概ね80%以上)、理=<挑戦型>数学・物理(概ね80%以上)、<研究奨励型>化学・生物科学
■神戸大
<総合型選抜>国際人間科学=発達コミュニティ、環境共生(理数系科目受験、320点以上/400点)、理=生物・惑星、医=医
■奈良教育大
教育=教育(音楽・保体・家庭・技術・書道=275/500点、その他=330/600点)
■島根大<総合型選抜II>
教育・人間科学(55%以上/300点)
■鳥取大
工=社会システム土木系(入学後の指導の参考とするため、可能な限り受験すること)
■岡山大
文、法、教育、理、医(保健)、薬
■広島大<総合型選抜II>
文=人文(概ね390/600点)、教育=初等教育・教育学系・心理学系(600/900点)、特別支援教育・自然系・社会系(585/900点)、音楽文化系(概ね455/700点)、法(概ね360/600点)、理=生物科学(概ね540/900点)、医=医(概ね720/900点)、保健(概ね600/900点<看護学専攻の専門型=概ね560/900点>)、歯=歯(概ね650/900点)、口腔健康科学(口腔保健学‐概ね500/800点、口腔工学‐概ね560/900点)、薬=薬(概ね540/700点)、工(概ね420/600点)、生物生産(540/900点)、情報科学(概ね630/900点)
■徳島大
医=医(概ね75%以上/900点)
■愛媛大<総合型選抜II>
法文、教育、社会共創、医=医、農
■九州大<総合型選抜II>
文、法、経済(75%程度)、理、医=保健(看護学・放射線技術科学・検査技術科学)、歯、工、芸術工、農
■九州工業大<総合型選抜II>
工、情報工
■佐賀大<総合型選抜II>
理工、農
■長崎大<総合型選抜II>
教育、経済、歯
■大分大
教育、医=医、福祉健康科学=福祉健康科学(理学療法、心理学)
■鹿児島大<自己推薦型選抜>
法文、理、医=保健(看護学)、歯、工=建築(建築学プログラム)、農、水産=国際食料資源学特別、共同獣医
■琉球大<総合型選抜II>
農(概ね50%であること)

<公立大>

■青森公立大
経営経済=全学科(入学前教育の一環)
■宮城大
看護・事業構想・食産業(入学後の指導の参考)
■山形保健医療大
保健医療=看護
■前橋工科大
工=建築・都市・環境工学群、情報・生命工学群(一般選抜前期と同じ共通テストを受験すること)
■東京都立大<グローバル人材育成入試>
人文社会=人間社会・人文、システムデザイン=情報科学、経済経営、都市環境=環境応用化学・都市政策科学(経済経営・都市環境は入学後の学業の参考)
■横浜市立大
データサイエンス、国際教養、国際商、理(国際教養・国際商・理は最終合格後の学習課題)
■大阪公立大
工=都市、医=医
■山陽小野田市立山口東京理科大<総合型選抜II>
工=数理情報科学、薬=薬
■九州歯科大
歯=歯(590/900点)、口腔保健(590/800点)
■長崎県立大
経営=経営(350/700点)

学校推薦型選抜情報

◆私立大における公募制の併願・複数受験の戦略と注意点

言うまでもなく学校推薦型選抜は、第1志望校に限って受験するのが鉄則だが、生徒によっては合格校を確保するために、第2・第3志望を受験せざる得ないケースも生じる。ここでは、一般推薦を中心に併願・複数受験のポイントを整理しておこう。

(1)志望校の難易度を把握する
一般選抜のように模試等の合格難易度はないが、学校推薦型選抜の難易度も、過去の合格実績、合格者の学習成績の状況、合格最低点などからほぼ難易度の判断はできる。合格者の学習成績の状況等を公表していない大学でも、進路指導部からの問合せにはある程度応じてくれるケースもある。いずれにしろ、第2・3志望の設定は、第1志望より難易度の低い大学を選択したほうが安全であることは言うまでもない。
(2)同系列の試験方法で受験できる大学を選択
第1志望が書類・面接・小論文であれば、これと同系列の入試方法を取る併願校もしくは受験負担の軽い併願校を選択するのがベター。第1志望が書類・面接なのに、第2志望以下は小論文や学科試験といった併願には大きなリスクが伴う。
(3)専願制を破らないで済む併願・複数受験を徹底
志望校が全て併願制(特に西日本)であれば、何校受験しても問題は生じないが、専願制と併願制の複数受験なら、専願制優先に徹して臨む必要がある。併願校の方が知名度は高くても、専願校合格なら、専願校に入学するのが原則だ。
(4)専願リレー受験の場合は日程に注意
専願制間の複数受験も必ずしも不可能ではないが、十分注意する必要がある。第1志望の合格発表後でも出願の間に合う併願校をあらかじめ検討しておき、第1志望の合格発表から第2志望校の出願開始までに余裕がない場合はあらかじめ出願書類を用意しておく必要がある。
学校推薦型選抜の場合、専願・併願を問わず、一括納入のケースが多い。併願制の場合は、一定期間までに入学を辞退すれば、入学金以外は返還されるが、複数受験では納付金をできるだけ無駄にせずに済む日程上の戦略に特に留意する必要がある。

◆国公立大における併願・複数受験の留意点

国公立大の学校推薦型選抜に関しては、併願・複数受験にきびしい制約が伴い、原則として1校1学部しか受験できないが、複数受験が全く無理かと言えば、必ずしもそうではない。その具体的な手順、留意点を紹介しておこう。

(1)第1志望は共テ免除型、第2志望は共テ併用型で受験
国公立大の学校推薦型選抜は共テ免除型が11月出願、共テ併用型が12月~1月の出願となっているケースが多いので、第1志望を共テ免除型、その合格発表後の第2志望を共テ併用型にすれば複数受験が可能になるが、大学によってダブル受験はできない場合も多いので各要項の留意事項の記載に注意してほしい。ただし、第2志望の当該校学部に推薦決定者がいない場合に限られることは言うまでもない。
(2)共テ免除型間の併願も可能
国公立大の学校推薦型選抜は全て専願制である。入試日程が短期間に集中しているが、弊社の年鑑で検討すれば、第1志望の合否発表後でも出願の間に合う第2志望校を探すことは可能である。ただし、高校推薦枠にアキがある場合に限られる。
(3)共テ併用型間の併願は不可能
共通テストを課す大学の複数受験は、学校推薦型選抜用の共テ成績請求票が1枚しかないので、自動的に不可能ということになる。
(4)国公立大と私立大の併願
国公立大と私立大の学校推薦型選抜を併願する場合、第1志望が国公立大なら、第2志望の私立大は日程からみて、併願制校を選択せざるをえない。ただ、国公立大合格なら、私立大に納付した入学金は戻ってこないと覚悟しておく必要がある。私立大が第1志望なら、国公立大への出願はしてはならない。

その他、大学によっては学校推薦型選抜募集要項に「本学以外の学校推薦型選抜への出願は認めない」などの注意書きがある場合もあるので十分注意してほしい。

ニュースフラッシュ

◆急速な少子化が進行する中での高等教育のあり方

中教審は9月25日、急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育のあり方について、諮問検討会を行った。高等教育のあり方を検討する背景・必要性として挙げたのが、急速な少子化、グランドデザイン答申以降の高等教育を取り巻く変化を挙げている。主な検討事項として

(1)2040年以降の社会を見据えた高等教育が目ざすべき姿
グランドデザイン答申で示された高等教育の目ざすべき姿を前提としつつ、同答申以降の社会的、経済的変化を踏まえ、これからの時代を担う人材に必要とされる資質・能力の育成に向け、高等教育機関に関して今後更に取り組むべき具体的方策について検討。その際、成長分野をけん引する人材の育成や大学院教育の重要性にも留意するとしている。
(2)今後の高等教育全体の適正な規模を視野に入れた地域における質の高い高等教育へのアクセス確保のあり方
2040年以降の我が国の大学入学者の減少や、地域ごとの高等教育機関を取り巻く状況の違い等を踏まえ、高等教育全体の適正な規模も視野に入れながら、高等教育へのアクセス確保のあり方を検討。特に、学部構成や教育課程の見直しなど教育研究の充実や高等教育機関の連携強化、再編・統合等の促進、情報公表等の方策も検討。その際、地方の高等教育機関が果たす多面的な役割も十分考慮するとしている。
(3)国公私の設置者別等の役割分担のあり方
国立:世界最高水準の教育研究の先導や学問分野の継承・発展等
公立:地域活性化の推進や行政課題の解決への貢献等
私立:高等教育の中核基盤として、専門人材の輩出や多様性確保等
短大は地方の進学機会を確保。高専は実践的・創造的な技術者の、専門職大は専門職業人の、専門学校は地域産業を担う専門人材の輩出に貢献。

こうした期待や変化等を踏まえ、急速な少子化の中での、設置者別・機関別等の役割分担のあり方や果たすべき役割・機能、その実現方策を検討するとしている。

(4)高等教育を支える支援方策のあり方
検討事項の(1)~(3)を踏まえ、教育研究を支える基盤的経費や競争的研究費等の充実、民間からの投資を含めた多様な財源の確保の観点も含めた、今後の高等教育機関や学生への支援方策のあり方等について検討するとしている。

以上の内容からも、急速な少子化に対応することは、喫緊の課題となっていることがわかる。高等教育の質を保つためには、検討事項の(1)(2)に大きく踏み込む必要があるだろう。いずれにしても、受験生の将来に明るい光が灯されるような改革を望みたい。

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