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AO・推薦入試エクストラ4月10日号

AO入試対策:2016生徒指導スタートのポイント

AO入試情報

AO入試対策:2016生徒指導スタートのポイント

2016年度入試に向けスタートを切るに当たり、AO入試対策に関する基本的な指導ポイントを整理しておこう。言うまでもなく、大学によりAO・推薦の実施状況は異なる。AO入試のみでは志望校の選択範囲は限られる(特に国公立大)。AO・推薦・一般入試の3区分を通して受験態勢を確立し、最終的には一般入試のための学習対策を貫徹する姿勢が大切であることを早い段階から十分生徒に周知しておくことが肝心だろう。

その上で、AO入試を活用させる際のキーポイントとして、次のような事柄があげられる。

  • (1)第1志望校(学部・学科)が早期から明確なこと。AO入試の多くは専願制で実施される(私立大では8割程度が専願制)。入学して悔いのない大学・短大であることが、生徒の将来にとって重要である。
  • (2)AO入試は、個性豊かな学習や活動に取り組んでいる生徒に向く。多様な生徒の中には、いわゆる受験のための学習にはさほど熱意はないが、ユニークな自主研究や課外活動・資格取得には情熱を注ぐ者も多い。そうした若者にとって、人物重視型のAO入試は最適の受験ルートになる。
  • (3)大学入学後、また卒業後にやりたいことが明確であること。AO入試では大学入学の目的や計画、将来のヴィジョンがきびしく問われるので、高3の早い段階で、将来を含めた進路計画ができている生徒に向く。中堅私立大群の場合、推薦入試の成績基準や合格者レベルには届かなくても、入学熱意や大学生活への目的観などによって、AO入試で合格できるケースも多々ある。
  • (4)AO入試の選考法は多彩で、生徒に向くパターンの選択に留意させること。多くの書類のほか、面談・面接、課題レポート、小論文、集団討論、スクーリング、センター試験など様々な選考法があり、生徒の個性・能力に適した選考法のチェックにも注意させる必要がある。特に国立大志望者にとっては、年間を通してセ試対策を貫徹することが大切であるが、今年度は京都大(8学部)が導入することもあって、AO戦線には新たな展開がみられそうだ。

◆AO入試による大学入学状況

この10数年で、AO入試の実施状況は格段に進展したが、設置者別にみると、それぞれの入学者比率・入学者数には大きな差異がみられる。2014年度の文部科学省統計によると、AO入学者が全体に占める比率は、下記グラフのとおりとなっている。


AO入試区分の大学入学者比較


文科省による入試結果の統計は、例年秋ごろ公表されるので、ここでは2014年度の統計を示した。前年の2013年度と比べ、国立大は全体の入学者微増、AO入学者数も微増で、AO入学者比率は前年と同じ2.6%であった。公立大は全体の入学者数、AO入学者数ともかなり増加して、AO入学者比率は1.9%→2.0%へ上昇した。

私立大の場合、全体の入学者数が約6千人、AO入学者数が約1千人減少し、AO入学者比率は、前年と同じ10.3%で推移している。

一方、短大では公立・私立とも入学者数が減少し続けているが、私立短大におけるAO入学者比率は19.8%→21.2%とついに2割台に入ったことが注目される。

推薦入試情報

◆推薦入試対策:2016生徒指導スタートのポイント

2016年度入試に向けてスタートを切るに当たり、推薦入試に関する基本的な対策・指導の主要ポイントを整理しておこう。言うまでもなく、推薦入試は国公私を問わず、導入率が高く、実施学部も豊富なので、現役合格の確保には欠かせない受験ルートだが、最終的には一般入試の学習対策も貫徹する姿勢が大切であることを早い段階から十分生徒に周知しておくことがきわめて大切である。

その上で、推薦入試を活用させる場合のキーポイントとして、次のような事柄があげられよう。

  • (1)国公立大は全て専願制だが、私立大には専願制・併願制の2タイプがあること。当然ながら、専願制のケースは第1志望であることが望ましく、入学して悔いの生じない大学・短大であることが、生徒の将来を大きく左右する。併願制のケースは、中部・近畿・中四国に多く、複数校の併願も可能だが、やはり志望熱意の高い大学・学部を選択するのが原則だ。
  • (2)一般推薦・ユニーク推薦の2タイプがあること。募集枠からみれば一般推薦が主流で、このタイプではやはり一定程度以上の成績水準(3.0~3.5以上)が必要になるので、前期の校内テストにはベストを尽くすよう指導しておきたい。ただし、学力試験を主要な選考法とするケース(特に近畿地区)は、成績基準を設けないのが一般的だ。いずれにしても、第1志望校の成績基準は、3年次の早い段階で確認させておく必要がある。
     一方、ユニーク推薦は、自主的な特別・課外・社会活動や各種の検定資格等の実績を持つ者に向く。推薦入試が多様な個性・資質・キャリアを受け入れる入試ルートであること、上位私立大群も活発に導入していることを周知しておきたい。
  • (3)学習・生活の両面でまじめさが必要なこと。推薦入試は調査書によって、高校時代の学習状況(所見含む)と出席状況その他の生活態度をきびしく検証する入試である。成績が志望校の基準を満たさない者はむろん、欠席日数がきわめて多い者、出席停止の記録がある者などは推薦入試には適さない。
  • (4)主要な選考法は、調査書プラス面接(口頭試問含む)、小論文、学力試験、実技の4タイプ。志望校の選考法を十分研究し、ふだんから基礎学力強化を含め万全の対策を徹底することが大切である。また、国公立大志望者は年間を通してセ試対策にもベストを尽くすことも必要だろう。

◆推薦入試による大学入学状況(入学者比率)

推薦入試制度の歴史は長く、国公私立大・短大それぞれで定着している。2014年度文科省統計によると、指定校制を含む入学者比率(推薦入学者数)は、下記グラフのとおりとなっている(2015統計は秋ごろ公表)。


推薦入試区分の大学入学者比較


国立大は2012~14年度の推薦入学者比率が12.4%→12.3%→12.1%と若干低下傾向がみられ、年度ごと100人程度ずつ減少している。公立大は、前年度と比べて、全体・推薦入学者数ともにやや増加しているが、推薦入学者比率は前年と変わっていない。私立大の場合は、かなり変動している。全体の約6千人減に対して、推薦入学者数も約5千人減少して、推薦入学者比率は40.3%→39.7%と4割を下回った(一般入学比率が上昇)。

一方、短大の方は公私とも全体の入学者数、推薦入学者数が減少しており、入学者比率は公立が43.2%→41.5%、私立が61.9%→61.3%へ低下している。

ニュースフラッシュ

◆東洋経済が「大学就職率ランキング」トップ300を公表

長い就職氷河期を経て、この1~2年、高卒・大卒の就職状況は目ざましく好転し、リーマンショック直前の2009年の就職率80.9%を超える水準に戻った。東洋経済は、大学通信の協力を得て、卒業生の多い順(大学院進学・修了者含み450人以上)に上位300大学について、就職率の高い順にランキング調査を実施した(実就職率を集計値に使用)。

就職率の差は、大学入試の学部志望動向にも大きな影響を及ぼす。近年では理系の人気が高く、文系の人気が低い「理高文低」の傾向が根強い。専門性が高く、高度な資格を取得できることで就職に有利なのが理系・保健系の人気の理由だ。その半面、文系卒の主要進出先である事務系は、専門職種が少なく、ITの進化によって次第に業務域がせばめられている。

今回の調査で、就職率トップは長岡技術科学大の97.8%で、2位に福井大の96.7%、3位に順天堂大(私立)の95.5%が入った。上位に目立つのは理工系、医療・社会福祉系、薬学系などの個性を持つ大学群である。文・法・経済など伝統的な文系総合大には苦戦傾向が目立つ。

就職率90%以上は、調査300校のうちわずか40校。その内訳をみると、国立14校、公立8校、私立18校。その中にはノートルダム清心女子大、女子栄養大、名古屋女子大、昭和女子大、東京女子大などが入っており、女子大の健闘も目立っている。

また、旧帝大系のランキングを紹介すると、名古屋大15位、大阪大123位、京都大159位、東北大176位、北海道大184位、九州大217位、東京大270位(71.5%)などとなっている。大学としての知名度が必ずしも就職率の高さと直結していないケースも多々あるので、十分留意する必要がある。無論、この調査は就職先の規模別になされているわけではなく、官公庁への就職状況も見えてこない。大企業に限定して調査すると、そのデータは全く別物になるはずだ。やはり、志望校のデータは、独自の多角的な視点からチェックするしかない。

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

AO入試(1):AO入試制度の沿革・概要・現状

第2次大戦後の昭和24年、新制大学制度が発足して以来、わが国の社会は急速に発展を遂げ、大学進学率も上昇の一途を辿り続けてきた。1990年代に入ると、大学を中心とする高等教育はユニバーサル化の様相を強めてきた。そうした社会現象と連動して、大学入学者選抜の多様化を推進するため、1997年、中央教育審議会がAO入試の導入と拡大を提言したのを受けて、文科省は正式に入試制度として実施要項に明記することとなった。

翌1998年度にまず同志社大が導入し、1999年度から桜美林大・立命館大など、2000年度から国立・私立大が続々と導入し始めて急速に拡大し、2015年度の実施状況(弊社調査)は次のとおりとなっている。

  • (1)国立大=82校中47校(57.3%)
  • (2)公立大=84校中20校(23.8%)
  • (3)私立大=576校中464校(80.6%)
  • (4)公立短大=16校中5校(31.3%)
  • (5)私立短大=315校中259校(82.2%)

公立大・公立短大での実施率が低いのは、入試スタッフに余裕がないことなどが主な要因とみられるが、AO入試の重要性そのものに対する認識も十分ではないようだ。国立大では後期日程の廃止と連動してAO入試の導入がやや進んだが、まだ実施学部・学科数が推薦入試と比べると格段に少なく、受入定員も小さい。ただ、今年度から京都大が、2017年度から大阪大が導入することによって、促進の気運は多少出てくるかもしれない。それに対して、私立大・短大ではこの10年余で急速に拡大し、その多くでAO・推薦・一般の3段階型日程が定着しつつある。

中央教育審議会は、当初、AO入試の基本として次の5点を挙げている。

  • (1)受験生が自らの意志で出願できる公募型の入試であること。
  • (2)求める学生像や、受験生に求める能力・適性等を明確にし、それに応じた選抜法を工夫・開発すること。
  • (3)受験生の能力、適性、意欲、関心等を多面的、総合的に評価すること。
  • (4)高校側との相互コミュニケーションを重視するものであること。
  • (5)専門的な(入試)スタッフの充実等、十分な態勢を整備すること。
     これらのガイドラインに沿って、高校教育と大学教育のスムーズな教育的接続を主眼として、AO入試は次第に成熟化への道を辿ってきた。

その反面、入試日程に一定の歯止めがなかったことから、5~6月からスタートするAO入試も多く、「青田買い」「学力不問入試」などの批判も絶えなかった。折しも、学士力の向上が高等教育の重要な課題として議論され始め、文科省は「大学入学者選抜実施要項」を2010年度に改訂し、2011年度から全大学に義務づけ、AO入試は新しい段階へ移ることになった。

その重要な変更点は、次の4点である。

  • (1)大学入学者選抜の基本方針では、「学力の要素を適切に把握」するよう転換を図った。
  • (2)入学者受入方針の明確化と、高校で履修すべき科目や取得が望ましい資格等をできる限り明示するよう求めた。
  • (3)AO入試で初めて「8月1日以降」と願書受付始期が設定された。
  • (4)AO入試における学力把握措置として、(ア)各大学が実施する検査(筆記、実技、面接等)、(イ)大学入試センター試験の成績、(ウ)資格・検定試験などの成績等、(エ)高等学校の教科の評定平均値、のいずれかを出願要件や合否判定に用いることとし、(ア)~(ウ)を行う場合には(エ)を積極的に活用することとした。また、合格後から入学までの「学習喚起」(入学前教育)についても、AO入試の分野が最も活発に実施されている。
  • 改訂6年目となる2016年度入試では、上記の方針がさらに多くの大学へ浸透するのは確実で、AO入試の指導に際して十分留意してほしい。

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