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AO・推薦入試エクストラ9月10日号

私立大:2016AO入試全国統計レポート(1)

AO入試情報

私立大:2016AO入試全国統計レポート(1)

弊社が毎年実施しているAO入試に関する諸統計の結果について、数回に分けてレポートする。第1回は、私立大の学部別実施状況を中心にご紹介する。

まず、AO入試実施校は468校で、前年初めて5校減少したが、今年度は4校増え、再び増加に転じた。地区別の実施校数は次のとおりで、関東・中部地区での減少が目立つ。

北海道・東北 関東 中部 近畿 中国・四国 九州
42校 171校 76校 101校 37校 41校

学部系統別の実施状況(複合学部は複数扱い)をみると、計1,333学部で前年より4学部増加している。昨今、学校数はやや伸び悩みの傾向にあるが、学部数は依然として増加傾向にある。内訳は次のとおり。

学部系統 2016年度学部数(比率%) 2015年度比増減
人文科学 232(17.4%) +3(+0.2%)
社会科学 475(35.6%) -3(-0.4%)
教育(教員養成) 151(11.3%) +10(+0.7%)
理工 119(8.9%) -2(-0.2%)
農・水産・獣医 12(0.9%) -1(-0.1%)
保健・医療 131(9.8%) -1(-0.1%)
生活(栄養) 81(6.1%) +1(+0.1%)
芸術 70(5.3%) -4(-0.3%)
スポーツ(健康) 62(4.7%) +1(+0.1%)

本年度の実施学部数では、教育(教員養成)系の増加が前年に続いて最も多く、次いで人文科学系の増加が目立った。近年、教育・医療など資格型学部の新増設が際立っており、これらの系統では今後もAO実施校が増えると予測される。社会科学系の減少は、前年に続いて学部の統合・再編がかなりあったことも影響している。

全体の実施学部数は、推薦入試の計1,732学部と比べてまだ少なく、特に保健・医療系は実施数が推薦入試の半分程度にとどまっている。

◆私立大:2016地区別AO入試の学部実施状況

ここでは、私立大の2016年度AO入試に関する地区別の実施学部状況をご紹介する。私立大では地区ごとの実施状況にかなり差異があるので、進路指導に際しては十分留意してほしい。なお、弊社統計では複合領域の学部は複数で集計している。

系統 北海道
東北
関東 中部 近畿 中国
四国
九州
人文科学 15 86 30 61 19 21
社会科学 39 178 78 111 33 36
教育(教員養成) 9 58 23 37 16 8
理工 9 53 12 22 14 9
農・水産・獣医 0 8 1 1 1 1
保健・医療 11 55 16 27 13 9
生活(栄養) 4 27 13 19 11 7
芸術 6 26 9 18 6 5
スポーツ(健康) 4 17 13 17 5 6
(計) 97 508 195 313 118 102

全般的には関東地区の学部数が群を抜いている。どの地区も社会科学系が最も多いが、特に北海道・東北、中部の2地区では4割を超える。最も学部数の少ない農・水産・獣医系は、全12学部のうち8学部が関東地区に集中している。人気の高い教育系、保健・医療系は各地区とも相当数が実施している。

推薦入試情報

◆私立大:2015学部系統別公募推薦入試の志願動向(弊社集計)

弊社では全国版「推薦入学年鑑」の発刊と共に、私立大の公募推薦入試の動向を把握するため、多角的な統計作業を実施している。今回は、まず2015入試結果のまとめからレポートしておきたい(データ公表校を集計、一部は指定校制データを含む)。学部系統別の志願・合格状況は、次のとおりであった。

系統 志願者数 合格者数 倍率
人文科学 48,092人 21,915人 2.2倍
社会科学 93,683人 41,262人 2.3倍
教育(教員養成) 18,634人 8,417人 2.2倍
理工 29,248人 12,804人 2.3倍
農・水産・獣医 7,253人 2,841人 2.6倍
保健・医療 44,232人 15,106人 2.9倍
生活(栄養) 13,468人 5,669人 2.4倍
芸術 5,606人 3,628人 1.5倍
スポーツ・体育(健康) 9,442人 5,324人 1.8倍
(計) 269,658人 116,966人 2.3倍

2012年度集計では約5千人、2.4%の志願減であったが、2013年度は約1万2千人、5.5%の大幅増加に転じ、2014年度も約8千人、3.3%増、そして2015年度は実に約2万3千人(9.4%)増と大幅に増加したことが特筆され、ここ3年連続で増加している。特に社会科学系の約1万3千人増をはじめ、人文科学系、保健・医療系の増加などが際立っている。過去4年、全体の平均倍率も2.0倍→2.1倍→2.2倍→2.3倍と若干きびしくなっているので、十分注意する必要がある。学部系統別の平均倍率では、保健・医療系が3倍台に迫っている点に注意する必要がある。次いで、農・水産・獣医系の2.6倍が高い。

◆私立大:2015公募推薦入試の地区別志願動向(弊社集計)

弊社で独自に集計した2015公募推薦入試の地区別志願状況についてご紹介する(データ公表校を集計、一部は指定校制を含む)。

地区 2015年度 2014年度 増減数 増減率(前年)
北海道・東北 6,703人 6,299人 +404人 +6.4%(-1.8%)
関東 43,615人 43,856人 -241人 -0.5%(-6.3%)
中部 23,531人 23,589人 -58人 -0.2%(-4.2%)
近畿 176,521人 153,376人 +23,148人 +15.1%(+9.7%)
中国・四国 11,266人 10,663人 +603人 +5.7%(+10.7%)
九州 8,022人 8,693人 -671人 -7.7%(-5.9%)
(計) 269,658人 246,476人 +23,182人 +9.4%(+3.3%)

2012年度は中国・四国地区のみが志願増、その他の地区は全て志願減であったが、2013年度は全く逆の志願動向となり、2014年度は近畿・中四国を除く4地区で再び志願減となり、2015年度はかつてない9.4%もの大幅増となった。推薦戦線でも隔年現象が生じることがあるので十分留意する必要があることを示している。

特に注目されるのは、例年、全国志願者の5~6割が集中する近畿地区が前年に続き約2万3千人、15.1%の大幅増となった点だろう。2015年度の志願増は、この近畿地区の大幅増が主要因といってよい。次いで北海道・東北、中国・四国の2地区でかなり志願者が増えた。少数精鋭戦の関東地区が平均1.5倍なのに対して、マスウォーの近畿地区は3.2倍もの激戦区となっている。

ニュースフラッシュ

◆平成28年度開設予定の学部設置等の認可状況を公表

昨年11月及び本年4月に文科省が大学設置・学校法人審議会に諮問した28年度開設に係る認可申請のうち、審査が終了して判定「可」(認可)とする答申が出された。認可された学部等は次のとおり。

(1)学部を設置するもの(私立大15校)

■東北薬科大
医学部=医学科100(東北医科薬科大へ名称変更)
■宮城学院女子大
現代ビジネス学部=現代ビジネス学科95(学芸学部国際文化学科は募集停止)
■学習院大
国際社会科学部=国際社会科学科200
■大正大
地域創生学部=地域創生学科100
■金沢星稜大
人文学部=国際文化学科75
■健康科学大
看護学部=看護学科80
■山梨学院大
スポーツ科学部=スポーツ科学科170(経営情報学部は募集停止)
■修文大
看護学部=看護学科100
■大阪経済法科大
国際学部=国際学科140
■関西福祉科学大
教育学部=教育学科(子ども教育専攻50、発達支援教育専攻50)
■大和大
政治経済学部=政治行政学科60、経済経営学科120
■大手前大
健康栄養学部=健康栄養学科80
■姫路獨協大
看護学部=看護学科80(外国語学部、法学部、経済情報学部は募集停止)
■岡山理科大
教育学部=初等教育学科70、中等教育学科60
環太平洋大
経営学部=現代経営学科200(次世代教育学部国際教育学科は募集停止)

(2)短大の学科を設置するもの(公立2校、私立1校)

■会津大短大部
幼児教育学科50
■静岡県立大短大部
こども学科30
■池坊短大
幼児保育学科100

(3)学部の学科を設置するもの(私立大5校)

■日本医療大
保健医療学部=診療放射線学科50
■八戸学院大
人間健康学部=看護学科80(同短大の看護学科は募集停止、人間健康→健康医療学部へ名称変更予定)
■金沢学院大
スポーツ健康学部=健康栄養学科80(スポーツ健康→人間健康学部へ名称変更予定)
■京都橘大
健康科学部=救急救命学科50
■大阪人間科学大
人間科学部=理学療法学科60

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

◆AO入試(6):AO入試で生きる生徒の個性・資質のチェック

大学入試のメインは一般入試、次いで推薦入試である。その2つと比較すれば、AO入試の受験市場は小さいが、大学入試の多様化を促進し、多彩な人材を発掘する上で、AO入試は独自の役割を担っている。2017年度からは京都大に続いて大阪大が「世界適塾入試」を導入する予定で、さらにAO入試への関心は高まると予測される。各高校の進路指導部をAO相談に訪れる生徒も少なくないはずである。高校側では、国公立大、私立大それぞれのAO入試の現状・特質を十分把握したうえで、入試のマッチングを検討する必要がある。

ここでは、どのような生徒がAO入試に向き、どのような個性・資質がAO入試で生きるか、(1)共通事項、(2)国公立大、(3)私立大の3つの観点から考察しておこう。

(1)共通事項

まず志願理由書、自己推薦書、活動報告書等の提出書類を通して、自分の進学目的や適性・能力・意欲等を明確に大学側へアピールできる内容性(学習・課外活動・取得資格など)と表現力を備えていることがポイントになる。とりわけ志望校の教育・研究における特性や卒業後の進路状況に関する十分な理解と、生徒自身との適合性を認識して、「明確な進学目的」を持っているかどうかを重視すべきだろう。

次に大多数の大学では、面接によって学力水準や適性・能力を判定する。面接の場で、明快に応答できる能力が不可欠になるので、応答・対話を苦手とする受験生の場合は、積極的に発言・対話・討論ができるよう指導する必要がある。

第三に、大学側が設定している「求める学生像」と生徒のマッチングを十分に検証することが大切になる。明らかに学究型や高度専門職業人の候補を求めるタイプのAO入試に、それらへの志向が希薄な生徒を送り込んでも徒労に終わる。近年は各大学とも綿密にアドミッションポリシーを明示しているので十分注意したい。

(2)国公立大

成績基準の有無にかかわらず、できる限り高学力層が適している。特に専攻教科に関連する成績水準は高い方がよい(最低でも4.3以上)。募集枠が小さい学部・学科が多いので、調査書の学習記録は合否判定できわめて重要になる。

セ試併用型では、過去の当該校の入試データ(セ試)を調べて、合格者の平均点か、悪くても受験者の平均点以上の得点を見込める学力が必要になる。言うまでもなく、医・歯・薬学系では80~85%以上の得点力が見込めないと合格は難しい。セ試の予測得点ラインが出願の可否を左右する。

また、面接や小論文に対応できる力も不可欠で、いわゆる受験勉強にはさして身を入れていなくても、個性的・自主的な学習・研究活動には熱中するタイプなら、AO入試は最適の受験ルートといえる。国公立大では志望する学問領域への高い適性および資質が不可欠といえる。

(3)私立大

私立大で最も基本的なことは、専願区分のいかんに関わらず、第1志望としての入学熱意になる。生徒が志望校を十分研究した上で、入学を希望しているかどうかが前提条件で、単に早期合格を確保したいという動機なら、再考を促す必要がある。

私立大のAO入学者比率が10%を超えている今日、私立大におけるAO入試の実施目的は高度人材発掘型、高学力型、課外活動型、有資格型、入学熱意型など様々に多様化しているが、各タイプに向く生徒の個性、能力、資質等の判断はさほど困難ではないだろう。各大学のアドミッション・ポリシーに沿って、各選考パターンへの適性をチェックすればよい。特に中堅私立大群にあっては、一般入試に対応できる学力、あるいは推薦入試にふさわしい成績水準を備えていなくても、生徒の目的志向やチャレンジ姿勢次第でAO入試の門戸は広く開かれている。

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