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AO・推薦入試エクストラ1月10日号

AO入学者の大学入学後の成績追跡調査

AO入試情報

◆AO入学者の大学入学後の成績追跡調査

近年、AO入学者の学力レベルが議論の的となり、文科省は「大学入学者選抜実施要項」で学力把握の強化へ舵を切った。多くの国公立大と一部の私立大では、入試区分ごとに入学後の学生の成績追跡調査を実施しているが、残念ながらそれを公表するケースは少ない。

むろん、実施している大学でも追跡調査の用い方は様々である。大学によって、学生のレベルにも相当の格差がある。しかし、一般に考えられているほど、AO入学者の質は低くないはずである。ある中堅国立大では、長年の成績追跡調査のノウハウをベースに、学生個々の成績の特徴を分析し、各クラスに配置されているスタディアドバイザー(教員)が適切な支援を行うため独自の「成績閲覧システム」を活用している。

そのデータは、縦軸に成績、横軸に単位数を取り、クラス全員の成績分布を表示する。画面中央にクラス全体の標準偏差を示す枠があるが、注目したのは枠外の4つのゾーン。Aゾーンの学生は単位数・成績とも優れたグループ。Bゾーンは単位不足のうえ成績も悪い、グループで、早急な支援を必要とするグループ。Cゾーンは、成績は良いが、単位の修得状況が悪いグループ。Dゾーンは、単位は取れているが成績が悪いグループ。同大ではこうした学生の持つ特性や状況に応じて支援し、最終的には「自立した学習者」の育成を目ざしており、このシステムに対する他大学からの問合せもあるという。

では、AO入学者はこのデータの中でどのような位置づけにあるかを見ると、多くは標準偏差の枠内に存在し、B・Dグループにも1人ずつ存在するが、注目すべきはAゾーンの15人中2人がAO入学者であり、しかも上位に位置する。ちなみにAゾーンでは後期入学者11人に対し、前期入学者はわずか2人に過ぎない。前期では高学力層が近隣の有力大へ流れる実情を如実に反映している。

同大は国公立大の中でAO入試に力を入れている大学の1つ。AO入試の受験生は、同大を第1志望とする熱意の高い受験生層であり、後期は有力大からの併願者が多い層である。こうして見ると、同大においてはAO入学者の存在がいかに重要かだれの目にも明白だろう。

従って、AO入試によって優秀な学生はとれない、というのは迷信にすぎない。大学進学の目的、自己の特性と学びたいこと、将来のヴィジョンなどを真剣に検討してAO入試に挑む受験生は、高校および大学の適切な支援によって、大きく成長できる可能性を秘めていることを改めて認識しておきたい。

推薦入試情報

◆指定校制をめぐるメリット、デメリット

推薦入試の歴史は長いが、文科省の「大学入学者選抜実施要項」に指定校制に関する記述は全くない。推薦入試という枠内に含めているので、あえて指定校制に触れる必要はない、というのが文科省の見解だろうが、今日の指定校制に混乱や課題が皆無と考えておられる先生方は少ないであろう。文科省は例年の入試結果統計においても、公募・指定校制を含めて公表しており、各区分別のデータは不明である。指定校制が優れた入試システムであるのなら、国立大への導入を検討してもよさそうなものだが、その兆しは全くない。

(1)指定校制の現状
現在、指定校制は公立大の一部と私立大の大部分で導入されている。私立大の場合、中堅上位~上位私大では公募制より指定校制の枠が大きいのが一般的であるが、大学によって異なる。地方圏では、指定校制を設けていても、志願者がきわめて少ないケースもあり、逆に指定校制への依存度が高い私立大もある。
(2)指定校に採用する基準
これまでの通念では、過去数年の当該大学・学部への一般入学の実績、その入学後の成績状況をもとにして指定校を選択するのが一般的であった。しかし、この通念は今日では崩壊しているといっても過言ではない。全国の高校を指定校にする私立大が出現するなど、その混乱ぶりは目に余る。出身高校の現況・レベルを把握しないままの入試で、適切な教育はとうてい望めないだろう。
(3)大学入試は全ての高校へ門戸開放が原則
指定校制は、たとえその大学の一部の入試であるにしても、受験できる高校を限定するもので、受験できない高校にとっては差別以外の何物でもない。大学入試の門戸は、全ての高校に開放されている姿が望ましいことはいうまでもない。
(4)選考方法では書類審査のみが主流
指定校制における選考方法は、高校側からの提出書類によって合格とするのが通例で、面接すら実施しないケースが多々ある。調査書によって一定の学力把握はできるが、面接、小論文、学力試験等できびしく選考される公募制と比べ、安易な選考法という印象は否めない。
(5)高校内選考で第1志望を諦めるケース
指定校として推薦依頼を受ける大学の数は限られており、高校内での選考結果によっては、受験生は第1志望を諦め、第2・第3志望へ回るケースもある。現役合格を約束される指定校制であるからこそ、そうしたケースが生じるわけだが、それが受験生にとって実り豊かな将来を約束するものとは限らず、中途退学の原因にもなりかねない。

弊社では公募制に限定した情報誌「推薦入学年鑑」を全国の高校にお届けしているが、指定校制に関するご意見・要望等をお寄せ下されば幸いである。

ニュースフラッシュ

◆平成24年度からの私立大医学部の収容定員増

文科省はこのほど私立大医学部8校の収容定員増を認可し公表した。今回の認可は、平成24~36年度までの期間を付した定員増で、次の8校となっている。

大学(医学科) 入学定員の変更 増員数
自治医科大学 113→123人 10人
獨協医科大学 115→118人 3人
北里大学 112→117人 5人
順天堂大学 120→121人 1人
帝京大学 113→117人 4人
東海大学 110→113人 3人
愛知医科大学 105→110人 5人
近畿大学 105→110人 5人

これにより、24年度医学科の入学定員は、過去最高の8,991人に増加し、医学部人気にさらに拍車がかかるとみられる。

◆医学部、メディカル・スクールの開設の動向

現在、地域の医師不足解消を目ざして、医学部やメディカル・スクールの開設を検討ないし準備しているのは、北海道医療大、東北福祉大・仙台厚生病院、茨城県、埼玉県、成田市、亀田総合病院(千葉県鴨川市)、聖隷クリストファー大などがある。

また、先月には新潟、宮城、神奈川、静岡の4県の知事らが文科省を訪れ、医師不足解消のため、現在は認められていない医学部の新設を解禁するよう共同で要望した。文科省は有識者会議の報告書を公表し、この1月中旬まで一般から意見公募を実施している。ただ、関係団体の間では反対論が根強く、解禁されるかどうかの見通しは立っていない。

【連載コラム】AO・推薦入試基礎講座

◆AO入試(10):合格対策の必須ポイント(2)小論文

AO入試基礎講座(9)の面接対策に次いで、今号では小論文対策を取りあげよう。言うまでもなく、AO入試では小論文は面接に次いで多くの大学で用いられる。読み・書きの基本力と共に論理的思考力、批判力、問題解決力、表現力等を測れる小論文は、AO入試では学力把握措置としても重要な意味を持つ。

ここでは、単に試験直前的な観点からではなく、年間を通していかに小論文作成力を育成するかという、長期的で幅広い視野から対策を整理しておこう。

(1)読書、新聞等に日常的に親しむ習慣を身につけさせる
高校における授業も、基礎となる知識・教養を吸収する上で大切なものだが、AO入試の小論文対策としてはそれだけでは不十分である。幅広い読書、興味ある学問分野の入門書、新聞等に日常的に親しむ習慣を身につけさせ、教科書レベル以上の奥行きのある教養を修得することが、AO小論文攻略の王道といってよい。言うは易く行うは難し、であるが、生徒との交流・指導の中でぜひ心がけてほしい。
(2)興味ある学問分野への視野を広げさせる
生徒の希望進路は、文系・理系を問わず多様であるが、高校での学習にとどまらず、興味のある学問分野への視野を広げさせる、様々な取り組みをさせ、レポート等にまとめる作業を何回か実施することが望ましい。そうすることによって、志望校・学部の選択が確かなものになり、大学進学の目的観に厚みが増してくる。
(3)将来の職業について考えを深めさせる
人が生を営むための基本は、職業によるところが大きい。大学で何を学びたいかだけでなく、卒業後、どんな職業に就き、社会とどのような関わりを持つかというヴィジョンを生徒が抱くように交流・指導することが大切であろう。それは難しいことではなく、生徒との会話の中で自然にできるものだが、近年では総合的学習の時間を活用して、生徒に進路研究をさせるケースも多い。
(4)未来志向型の人間力を育成する
生徒の学力レベルは様々である。国公立大や有名私大のAO入試を目ざせる生徒ばかりではない。現状では成績レベルはさして良くなくても、未来に向かって力強く歩もうとする人間力を備えた生徒なら、AO入試で未来の扉を開く可能性は十分ある。日常の交流の中で、生徒の個性を見出し、自信を持たせ、支援することによって生徒自身の人間力は大きく開花するだろう。

以上のような事柄が、AO入試における小論文に向き合った時、大きな力を発揮する原動力となるはずである。試験直前期の添削指導等は、最後の仕上げと考えておきたい。

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