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AO・推薦入試エクストラ11月10日号

私立大:2020公募推薦入試の全国統計レポート

AO入試情報

◆大学側が実施する入学前教育とその対応

AO入試で現役合格を確保した生徒たちにとって、11月~翌年3月までの学習と活動は、きわめて大切である。生徒たちが大学生活に向けて、学力の質向上や人間形成面で努力することが求められる。そこで、大学側も様々な入学準備教育のプログラムを用意しているが、そのパターンや特徴を見ると同時に、高校側の留意点をチェックしておきた。

(1)基礎学力の補強添削型
入学予定者に主要教科(英・数・理中心)の基礎学力を改めて再確認させ、補強することを主眼とする大学では、問題冊子等を送付して、その学習を求める。このタイプでは、外部の予備校・添削会社に委託して、通信添削の形式で実施するケースも多い。生徒がまじめに課題に取り組んでいるか、見守る必要がある。
(2)課題・推薦図書に基づくレポート提出型
大学側が一定の課題図書、推薦図書を設定し、入学予定者が希望の図書に沿って小論文なり、レポートを仕上げ提出するタイプで、全般的にはこのタイプが主流を占める。大学によって、入学までに1~3回と課す回数は異なる。課題を選ぶ際、取り組み方、書き方など、基本的なアドバイスをして、生徒の成長をサポートしたい。
(3)スクーリング型
地元・地域の受験生が中心になる大学・短大では、入学までに数回のスクーリングを設定して、入学予定者に大学生活の準備、入門講義、基礎的な演習・実験、レポートなど、様々なプログラムを実施して、高校生活からスムーズに大学生活を迎えられるようサポートする。一般的に土・日を利用して実施されるので、高校の授業にも支障はない。生徒が必ず参加するよう留意してほしい。
(4)総合プログラム型
入学準備教育の内容・質が高く、複数の内容を組み合わせて、大学生活にふさわしい資質を育成しようとするタイプ。成蹊大経済学部の例をあげると、(1)課題図書の内容要約と感想(指定された課題図書リストから2冊を読んで、指定された用紙に要約等を記入する)、(2)経済学・経営学エッセイに基づく考察(指定されたエッセイを2つ読んで、日常生活を経済学・経営学の視点から考察する)、(3)TOEICテスト対策課題(指定されたTOEICの参考書や問題集を学習し、課題を提出する)、の3つがある。生徒にとってかなり時間と労力を要する内容だが、まじめに取り組めばそれなりの成果が期待できるので、高校側もサポートを通じて、生徒の成長を見守りたい。
(5)強化合宿型
小論文やレポートの提出も課すが、最終的にはAO入学予定者だけの2~3泊の合宿を実施して、入学準備教育の仕上げを行うタイプ。内容は入門ガイド、基本教科の重要事項の補強など。この形態をとる大学は少ないが、合宿参加で生徒の姿勢は大きく変化するので、必ず参加するよう勧めたい。
(6)セ試・外部検定試験の受験型
全体からみれば数は少ないが、センター試験の受験、外部検定試験の受験を義務づけるケースがある。広い意味で、入学準備教育の一環として実施しており、これらの受験を怠った場合、入学許可を取り消すケースもあるので十分注意したい。

推薦入試情報

◆私立大:2020公募推薦入試の全国統計レポート

弊社では、毎年、私立大の公募推薦入試に関する諸統計をまとめている。今号では、地区別実施学部数の詳細をご紹介する(全国集計は弊社「推薦入学年鑑」の解説ページにグラフを掲載。複合学部は複数扱いで集計)。

<地区別公募推薦実施学部数> *ユニーク推薦含む
北海道
東北
関東 中部 近畿 中国
四国
九州
人文科学 20 109 43 78 25 25
社会科学 47 196 95 138 38 44
教育(教員養成) 15 67 34 50 24 18
理・工学 9 70 18 33 12 19
農・水産・獣医 2 19 3 4 2 1
保健・医療 33 107 58 79 25 25
生活科学(栄養) 12 32 20 27 15 12
芸術 8 24 9 22 7 4
スポーツ・体育(健康) 5 27 21 22 7 8
(計) 151 651 301 453 155 157

全ての学部系統にわたって実施学部の層が厚いのはやはり関東地区、次いで近畿・中部の2地区だろう。全地区とも人文科学系、社会科学系、保健・医療系、教育系、理工学系の5分野は豊富にそろっているが、その他の分野については地区によってかなり格差があるので注意する必要がある。

特に実施学部数が地区で10校未満の系統の志願動向には十分注意する必要があり、農・水産・獣医系は関東地区への一極集中が目立っている。全般的には、就職実績や資格志向の目立つ分野、例えば保健・医療系、教育系、管理栄養系などの人気が目立っている。

◆私立大:2020地区別一般推薦の成績基準の設定状況

私立大における一般推薦の成績基準の設定状況は、地区によって大きな差異があるので、十分留意してほしい(全国集計は弊社の「推薦入学年鑑」の解説ページにグラフを掲載)。
北海道
東北
関東 中部 近畿 中 国
四国
九州 (計)
なし 9 47 47 102 21 20 246
2.7 0 3 1 0 1 1 6
2.8 0 0 0 0 0 0 0
2.9 0 0 0 0 0 0 0
3 15 54 29 8 12 16 134
3.1 0 4 0 0 1 1 6
3.2 9 32 8 4 2 6 61
3.3 11 27 9 3 2 4 56
3.4 2 8 3 0 2 0 15
3.5 25 54 20 5 6 14 124
3.6 5 11 3 0 1 1 21
3.7 3 3 3 0 0 4 13
3.8 5 13 1 1 1 4 25
3.9 0 2 0 0 0 0 2
4 1 11 0 4 0 0 16
4.1 0 1 0 0 0 0 1
4.2 0 2 0 0 0 0 2
4.3 1 0 0 0 2 1 4

上記の表から分かるとおり、成績基準の設定が最もきびしいのは関東地区、次いで北海道・東北地区の東日本。反対に基準設定が緩やかな地区としては近畿があげられ、基準を設けないケースが8割余を占める。次いで、中部地区、中国・四国地区の基準が緩やかで、こと成績基準については「東高西低」の構図が明白に見て取れる。また、学力把握措置の強化に伴って、近年は基準撤廃のケースがやや減少し、3.0~3.4と3.5以上のゾーンの設定が増える傾向にある。

ニュースフラッシュ

英語民間試験の大学利用は低調…そして急転直下の「先送り」へ

令和2年(2021年)4月開設予定の大学・学部等を文科省が公表したが、専門職大学はわずか3校にとどまっている。

2021年度入試からスタートする大学入学共通テストで導入される予定だった英語民間試験。文部科学省は10月25日、合否判定などに活用する大学・短大の最終状況を特設サイトで公開した。初年度に活用する国の成績提供システムを利用する大学・短大は全体の6割にあたる629校で、4年制大だけでは7割の538校にとどまった。

民間試験の成績は、国の成績提供システムを使って大学入試センターが集約し、各大学に提供される。利用方針を明らかにしない大学が少なくないなか、文科省は9月末に一度締め切った後、10月11日までを参加表明の最終期限としていた。10月に駆け込んだ68校を加え、システムを利用する大学は71%(国立大95%、公立大86%、私立大65%)で、短大は30%どまり。

ただし、学部の一部で実施する推薦入試やAO入試だけでシステムを利用する大学も含めて「利用予定」に分類され、サイトに大学名が記載された。また「利用しない」とした場合にも、個別に民間試験の成績を合否判定の参考にする大学もある。全般的に大学の参加申込みはきわめて低調だった。

英語の民間試験は「読む・聞く・話す・書く」の4技能を測る目的で、大学入学共通テストで活用される。ただし、その活用状況は大学によって様々に異なるうえ、高額な受験費用など、家計や住む地域で受験機会に格差が生じる。また、民間試験の会場や日程の公表(文科省は共通IDの発行申込が始まる11月1日までに公表するよう求めた)が遅れるなど、受験界に不安が広がっていた。国大協や文科省の前では、民間試験の導入に反対する抗議デモも見られた。そして、国会での文科大臣の「身の丈」発言が引き金となって大きな政治問題になり、共通IDの発行申込開始日、文科省は2024年度へ先送りし、新入試システムを抜本的に見直すこととなった。

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